あなたは、好きでもないのに持っている服はありますか。私は、ジーパンがそうなんです。。着心地も悪く全然好きではないのですが、ずっと前からタンスに1本は持っています。
ポケットがあるのは便利だし、上に何を着ても大体おかしくならないのでコーディネートに悩まなくていいという点では大変優れた衣類だと思っています。
ジーンズ生地のスカートも持っていて、こちらもコーディネートが楽な一着です。
正直、若い頃あれほど嫌いだったデニムを40代になってもまだ着ているとは思いませんでした。
子供の頃はジーンズと呼んでいた記憶があるあのズボン。周りの友人などはジーパンと呼ぶ人も多かったように思いますが、いつしかデニムと呼ぶことも増えてきました。
そもそもこれらの言葉の違いは何なのでしょうか。インターネットと書籍であれこれ調べてみました。
ジーパン、デニム、ジーンズ。それぞれの意味
紛らわしい言葉たちですが、その意味には重なる部分と異なる部分があるようです。
カタカナで書かれるけれど完全な日本語のジーパン

ジーパンという言葉はジーンズ生地で作られたズボンを意味する言葉です。カタカナで書かれますが、完全な日本語です。
第二次世界大戦後の占領下の日本で米兵の相手をした日本人娼婦たちが、客からもらった古着を売りました。
彼女たちの客と言えばアメリカの軍人。彼らの正式名称はGovernment issuees、略してG.I.と呼ばれていました。
その古着の中にあった青色の作業ズボンをGIパンツと読んだのがジーパンの始まりだそうです。
日本人が作った日本語なので、ジーパンは英語圏の人に言っても通じません。
インターネットのアンケートでは3つのうち最もよく使う呼び名との結果もあったものの、ナツメ社の早引きファッション・アパレル用語辞典には「ジーパン」は掲載されていませんでした。
用語辞典の前書きには、「見出し語は、現在わが国で一般的によく使われているものを採用した」と書かれています。
つまり、発行された2013年時点ではあまり一般的な言葉でないと編者は感じたようです。
別の書籍ではこんな記述を見つけました。
一九五〇年代末、初めて私が、歓喜とともに穿いたのは間違いなく「ジーパン」であった。
(中略)
一九七〇年代に入ってから、次第に”ジーンズ”の呼び名が優勢になった。
出石尚三「完本 ブルー・ジーンズ」新潮社
デニム生地のズボンを示す「ジーパン」は日本で生まれ、親しまれてきた言葉ですが、徐々に使われる機会が減ってきている言葉だと言えそうです。
生地を表す言葉だったデニム

デニムは元々生地を表す言葉です。フランス語でニーム産のサージを意味するセルジュ・ド・ニームが変化してデニムと呼ばれる様になりました。
デニム(denim)生地は、10番手以上のタテ糸をインディゴによって染色し、ヨコ糸を未晒し糸(染色加工をしていない糸)で綾織りにした、素材が綿の厚地織布。
引用: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
やや分かりにくい説明ですが、10番手というのは糸の太さを表す言葉で、1番手→2番手、と数字が大きくなるに連れて、糸は細くなります。
インディゴとは藍色の染料で、植物性の天然染料と、化学染料の2種類があります。
元々はインドで栽培される「インドアイ」という植物から取れる染料が「インジゴ」と呼ばれ、やがて「インディゴ」に変化していったようです。
少し話はそれましたが、上記の様にタテ糸にインディゴ染の糸、ヨコ糸に未晒しの糸を使って綾織りしていくと、表にはインディゴブルーが多く出て裏は未晒し糸が多く出ます。
このためデニム生地は裏表で色合いが異なる布に仕上がります。
とは言え、技術の進歩と共に様々な種類が生まれ、一口に「デニム」と言っても織り方、染め方、素材も多様になってきました。
さらに、デニムという言葉はデニム生地で作られた衣類を表現するのにも使われています。
本来の言葉の使い方では無い、と考える人もいますが、メディアや若い世代を中心に広がっています。
その上、ファッション・アパレル用語辞典には「別名ジーン」と書かれています。ジーンも厚手で綾織の綿織物を指す言葉です。
以上から、「デニム」は厚手で綾織の綿織物を指す言葉で、ジーンの別名でもあり、デニム生地で作られた衣類も表す言葉と言えます。
大変に広い意味を指す言葉ですね。
ジーンズはデニムなどの厚手の生地で作られたズボン

ジーンズというのは厚手の綿綾織物(デニムまたはジーン)で作られたカジュアルなズボンのことを表す言葉です。
デニムが生地の種類を示すのに対して、 ジーンズは縫製された後のズボンを指すことが多いです。
ジーンズは英語でもそのまま通じる言葉です。英語では、ソックス(socks)、パンツ(pants)、 シューズ(shoes)など足に身につけるものは複数形になるのが普通です。
もともとはイタリアのジェノバ製という意味のGenes(ジェンズ)という言葉がアメリカに伝わってジーンとなり、複数形でズボンを表すジーンズになりました。
このようにジーンズという言葉にはズボンという意味が既に含まれていると考えられます。
デニムとジーンズは、どちらも同じくらい浸透している言葉で、「ジーンズ」というキーワードで検索したらデニムと書かれた商品がたくさん見つかるような状況です。
デニムは生地を意味する事が多いのに対し、ジーンズはズボンを意味することが多い。しかし、同じ意味で使われることも多いという紛らわしい言葉ですね。
定番のブルー・ジーンズの3つの特徴

ここまでジーパン、デニム、ジーンズという言葉の意味を見てきましたが、私達の心の中には何か定番とも言えるジーンズの姿が思い浮かぶのではないでしょうか。
様々なバリエーションのある衣服ですが、ブルー・ジーンズの定番の形をここで確認しておきましょう
- ブルー・デニムを使用している
- ファイヴ・ポケット(前に2つ、後ろに2つ、前右側に小さなウォッチポケット)
- カパー・リヴェット(要所要所に打ち付けられた補強用の銅製の鋲)
写真の中に赤い矢印で示したのがウォッチポケットです。ジーンズが登場した頃には腕時計でなく懐中時計を入れていました。
正直、この細いポケットは使いにくいですし、ここだけ生地が重なって 乾きにくくて本当に邪魔だと思っていたのですが今回初めて用途を知って納得しました。
懐中時計ならベルトにチェーンで繋がっているでしょうから、チェーンを引っ張れば手が入らない細いポケットからでもすぐに出すことが出来たでしょう。
まとめ

ジーパン、デニム、ジーンズ。これらの言葉はよく似たような意味で使われます。
それぞれの意味は、以下の通りです。
- ジーパン:デニム生地のズボンのこと
- デニム:厚手で綾織の綿織物を指す言葉で、ジーンの別名でもあり、デニム生地で作られた衣類も表す言葉
- ジーンズ:厚手の綿綾織物(デニムまたはジーン)で作られたカジュアルなズボンのことを表す言葉です。
デニムとジーンズは、どちらも生地を指す場合とその生地で作られた衣類を指す場合があり、同じ意味で使われることも多いです。
どちらかと言うと、デニムの方が生地を表すことが多く、ジーンズの方が衣類を表す事が多いようです。
また、ジーンズの中でも特に定番とされるものには以下の特徴があります。
- ブルー・デニムを使用している
- ファイヴ・ポケット(前に2つ、後ろに2つ、前右側に小さなウォッチポケット)
- カパー・リヴェット(要所要所に打ち付けられた補強用の銅製の鋲)
ファッション・アパレル用語辞典の前書きには次のような事が書かれていました。
ファッション用語は、ときにはファッションそのものより移ろいやすいもの。
(中略)
それは、ファッションが尽きることない生命力を持っている証拠でもあります。
5年後、10年後にはデニムやジーンズの意味も変わってしまったり、別の言葉が誕生しているかも知れませんね。
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